腫瘍横断的な骨転移診断における血清GDF15 propeptide測定の臨床的有用性:多施設共同研究
大阪大学大学院医学系研究科 器官制御外科学講座(泌尿器科学)
山道 岳
Yamamichi G, Kato T, Matsukawa A, Masunaga N, Hirata H, Okuno J, Kawamura N, Kunimasa K, Seto I, Kin T, Masuhiro K, Sato S, Myoba S, Ikeda S, Ujike T, Ishizuya Y, Hayashi T, Yamamoto Y, Hatano K, Kawashima A, Miyagi Y, Uemura M, Nishino K, Nakayama T, Nakayama M, Takeda Y, Shimazu K, Nonomura N
Clinical implications of serum GDF15 propeptide as a biomarker for bone metastasis across common solid tumors:a real-world multi-institutional study
Biomarker Research,14,88,2026, DOI:10.1186/s40364-026-00982-4
骨転移は癌種を問わず生じる病態で本邦では年間約16万人が罹患するといわれており、特に近年では癌患者の生存期間延長に伴って骨転移診療の重要性が増してきています。骨転移患者に特有の合併症である骨関連事象が生じると生活の質が著しく低下するため、早期に診断し骨修飾薬を開始することが重要です。しかし骨転移診療ガイドラインにおいて骨転移診断マーカーの有用性は確立されていないため、癌種を問わず骨転移診断が可能な簡便かつ鋭敏なバイオマーカーの確立が喫緊の課題と考えられています。
そんななか申請者は質量分析を用いて、成長分化因子GDF15のプロペプチドであるGDPP(growth differentiation factor 15 propeptide)が前立腺癌細胞だけでなく骨芽細胞と破骨細胞の両方からも分泌されることで前立腺癌骨転移患者の血中で高発現し、既存の骨代謝マーカーよりも骨転移診断やモニタリングに有用であることを見出しました。さらにGDPPは前立腺癌細胞の骨転移を促進させるだけでなく、骨芽細胞におけるRUNX2, ATF4, OSXや破骨細胞におけるNFATc1, DC-STAMPといった転写因子の発現を介して分化を促進させることを発見しました。この様に前立腺癌の骨転移においてGDPPが骨芽細胞や破骨細胞を介して骨微小環境におけるvicious cycleを亢進させることを明らかにした経緯があります(Yamamichi G, et al. Biomark Res 2024)。そこで本研究では、前立腺癌だけではなく骨転移指向性の高い他癌種(乳癌・腎癌・肺癌)で血清GDPP測定の骨転移診断における臨床的な有用性を多施設共同研究で検討しました。血清GDPPに対する比較対象は日常臨床で使われている既存の骨代謝マーカーであるALP・LDH・PINP・TRACP5b・OC・BAPに加えて腫瘍マーカーであるPSA・CEA・CA15-3としました。その際に神奈川県立がんセンターのバイオバンクから肺癌患者の血液サンプルを提供していただいたことで本研究が加速したため非常に感謝しております。このバイオバンクは文科省科研費の学術変革領域研究[学術研究支援基盤形成]コホート・生体試料支援プラットフォームの研究費をいただいているものです(KAKENHI 22H04923 (CoBiA))。
その結果、血清GDPP測定は前立腺癌・乳癌・腎癌において既存のバイオマーカーと比べて最も骨転移診断能が高かったです(それぞれAUC=0.91、0.80、0.51)。一方、肺癌においては血清GDPP測定が骨転移診断に有用ではなかったです(AUC=0.51)。その原因を検討したところ他の3癌種に比べて肺癌は有意に骨転移数が少なかったためと考えられました。
以上のことから血清GDPP測定は前立腺癌・乳癌・腎癌における新規の骨転移診断バイオマーカーとして有用である可能性が示唆されました。現在はこれらの成果を活かして多施設前向き観察研究を行っている状況です(jRCT1050260112)。















